日別アーカイブ: 1997/06/01

視聴覚教育掲載『インター日記③』

『ネットワード・インターナショナル・サービス(以下、Netword)』『パシフィック異文化教育アカデミー(以下、PCA)』がメディア掲載、取材等で取り上げられた記事を紹介致します。
以下、掲載記事


【インター日記 新しい教育の方法を模索して③】

嬉しい!驚きの声!ロビナ小学校の子どもたち
グローバルメディア エデュケーショナル コンサルティンググループ代表
和子・ドレイク

写真:インターネットテレビ会議写真:インターネットテレビ会議


インターネットテレビ会議システムの利用

筆者はこれまで、コンピュータ教育開発センター(CEC)のマルチメディア教育に関するプログラムのなかで、三年前よりオーストラリアとのコーディネートを手がけてきた。今回、視聴覚教育の一環として、京都市立松尾小学校とオーストラリアのロビナ小学校とのインターネット・テレビ会議が成功できたことは、準備期間がわずか一か月弱であったにもかかわらず、松尾小学校とロビナ小学校の校長のご理解、各担当の先生方の専門分野でのテクニカルな効果的援助、そして何にもまして、このテレビ会議に参加してくれた両校の四年生の純な好奇心に満たされた、まさに未来を背負っていく子ども心が大きな力となったと確信している。

このプロジェクトのいきさつについては、前回の松尾小学校の中井先生の報告をご覧いただくとして、今回は、テレビ会議当日のロビナ小学校での様子を報告する。

写真:テレビ会議の様子(左上が筆者)
図1)テレビ会議の様子(左上が筆者)


テレビ会議の準備

オーストラリアは一月二七日より、新学期が始まった。クイーンズランド州教育庁のテクノロジー教育の中のコンピュータサポートセンターの担当教師であるパム・モルナーさんとポール・バード校長、筆者が、二七日よりリソースセンターである図書館にインターネットの設備を設置した。そして翌二八日に松尾小学校とインターネットでの接続を試み、成功した。

しかし、日中の時間帯では音声を含めての会議は大変時間がかかりすぎることと、不確実な点が判明したので、コンピュータスクリーンに両校の生徒たちの様子をとらえ、電話にスピーカー装置を加えて、両国、両校、全員が画像を見ながら討議交流が実現したわけである。

今回は第一回目の試みで、ロビナ小学校へは松尾小学校の質問に答える形を取ることを了解してもらい、中井先生よりQ&A形式のリクエストにロビナ小学校のバード校長、クリス先生と表のように作成し、当日は両校が英文のテキストを手に、ロン・ケイスリー先生(松尾小学校側通訳)と、筆者(ロビナ小学校側通訳)が最小限のコミュニケーションガイドを受け持ち会議を進めた。

当日のトピックスは子どもたちが大変身近に意識し、素晴らしいプログラム作業をしている環境問題 ―― 川や道路、家庭、学校よりのゴミ処理についてであり、テレビ会議を進めるのに大変わかりやすく適した内容であった。


ロビナ小学校の成果について

ロビナ小学校は一九九〇年の一月末に約二五〇人の生徒で開放し、昨年一二月には第一期生一二名が卒業した。

バード校長は第二外国語の修得に日本語を採用し、高学年の六、七年生は全員が日本語を熱心に学んでいる。一九九一年より日本への異文化交流プログラムを実施し、現在では広島県と岐阜県の姉妹校との交流が毎年確実に行われている。今回、松尾小学校の四年生のプロジェクトということで、ロビナ小学校も四年生が対応してくれた。

  • 生徒たちは未だ日本語を学習していないが、日本からの学生の来訪には接しており、大変興奮して、かたことの日本語のあいさつや、松尾小学校の返事の声を耳にし、素晴らしい体験をしたと、誇らしい表現を強く示した。
  • 校長をはじめ教師は、二年前よりCECの一〇〇校プロジェクトの一〇一校目に選んでくれたことをバネに、前向きに今回のような機会を求めていたので、大変意欲的に取り組むことができ、またさらに将来のプロジェクトへ取り組む姿勢が高まった。
  • 今回のプロジェクトがクイーンズランド州教育庁のニューズレター「ラーニング・テクノロジー(Learning Technology)」の一面に取り上げられた。クイーンズランド州の小学校でのリーダーとして良いお手本となったことを、大変誇りに思うようになった。
  • さらに松尾小学校の皆さん、今回のこのプロジェクトの成功を支えてくれた方々とチームワークの大切さを分ち合えたことが、大きな成果といえる。

異文化理解交流について

今回のプロジェクトに際して筆者の夫であるハロルド・A・ドレイク(環太平洋異文化教育 / メディア学院長、日豪メディア・文化交流ジャーナリスト)が、サポートしてくれた。筆者は異文化理解語学教育プログラム作成、実践指導(主に日・米・英・アジア(極東)が中心)を手がけて二〇余年になる。ここ七年は環太平洋の唯一の英語圏であるオーストラリア、その中でも教育面でリーダーシップを取りつつあるクイーンズランド州での日本文化、教育等の交流に力を入れてきた。ゴールドコースト、ブリスベンの学校へのアドバイザリーとして架け橋をしているなかで、今回の教育テクノロジー分野でのプロジェクトに携わることになった。

世界の隣国が隣人として、まるで机にいる友だちのように、海を越えて八〇〇〇キロのところで意見を交あわせたという事例を報告できたことを何より感激している。

六月後半に定例の異文化教育交流プログラムで、ロビナ小学校の子どもたちが来日し、松尾小学校へもホームステイをベースにして訪問する。松尾小学校での肌で触れ合う授業展開が期待される。

次回は、全体的なオーストラリアの情報教育の状況、ロビナ小学校でのアジア文化への興味、多国籍国家の様子など、さらにロビナの子どもたちの来日風景なども報告したい。

写真:メモを手に質問に答える
図2)メモを手に質問に答える

写真:皆コンピュータ画面に注目
図3)皆コンピュータ画面に注目

写真:松尾小とインターネットでつながった
図4)松尾小とインターネットでつながった

写真:画面には両校の様子が映し出される
図5)画面には両校の様子が映し出される

参照:視聴覚教育 VOL.51 No.6 1997 (財)日本視聴覚教育協会